副業を事業として確定申告してよいのかどうか?

 こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。

 近年、副業を始める会社員も増えていると思います。

 副業として始めた仕事が、好調で収入も増えてきたとき、確定申告で事業として申告してよいのかどうか悩むことがあることでしょう。

目次

副業はまずは「雑所得」で申告

 「副業」というからには「本業」があります。

 会社員なら「給与所得」が本業ですね。

 たとえば、副業として業務委託の動画編集作業やフリーのカメラマンの仕事を始めたとしましょう。

 これらの仕事は所得税法上、「業務」という取扱いになります。

 実はこの「業務」というのは、ざっくり「ある程度継続して収入を得ている」ような活動をいいます。

 そして、その「業務」のうち、特に「生計を立てていくためにリスクを承知で利益を追い求める」ような活動を「事業」といいます。まさに「自営業」ですね。

 会社員が給与収入で生計をたてながら、スキマ時間で動画編集作業などにより収入を得ている状態は、「『業務』だけども自営業とまではいえない活動」に該当します。

 この自営業とまではいかない仕事の利益を確定申告するときは、「雑所得」として申告しましょう。

 なお、しばしば「雑所得」は経費が引けないと考えている方がおられるようですがそんなことはありません。

 動画編集作業であればPC関連費用や知識を得るための支出など、カメラマンであればカメラ購入費や交通費などを経費として計上することができます。

 雑所得の場合、通常は、事業のように決算書などの経費の内訳を記載した書類を確定申告書に添付する必要はありませんので、確定申告書だけに直接その年間の金額を記載すればOKです。

雑所得と事業所得の主な違い

 先ほどの説明のとおり、その「業務」で主に生計を立てている状況であるときは、いわば「自営業」の域に達しているため、「事業所得」として確定申告することとなります。

 「雑所得」と「事業所得」の税務上の主な取扱いの違いは次の点です。

・収支が赤字の場合に、その赤字を他の給与所得などと通算(プラスマイナス)することができるかどうか

・青色申告を申請して青色申告特別控除などの特典を受けられるかどうか

 まず、「雑所得」では青色申告をすることができません。青色申告は「事業」に限ってその制度が用意されているものです。

 次に、「事業」の白色申告の状態と「雑所得」の状態を比較した場合、最も大きな違いは「赤字が生じた場合の取扱い」です。

 「雑所得」の場合に、収支を計算したら「赤字でした」という場合には、その赤字は確定申告書に記載することはできるものの、他の給与所得などの金額から差し引くことはできません。

 一方、「事業所得」の場合には、その赤字があるときは、他の給与所得などの金額から差し引くことができます。この他の所得と相殺することを「損益通算」といいます。

 イメージとしては次のとおりです。

 事業所得金額 ▲40万円

 給与所得金額  250万円

 合計所得金額  210万円(損益通算後)

「雑所得」と「事業所得」の境界線

 では、雑所得なのか事業所得なのか判断に迷った場合、どのように考えればよいでしょうか?

 ポイントは次のとおりになるでしょう。

・その収入が給与収入より大きいか?

・その所得金額を得るために費やしている時間や労力は給与所得金額のよりも多いか?

・その所得を得られなくなったら生計がたてられなくなるか?

・その所得を得る活動は継続して行っているか?

・その所得を得るために投資(支出)をしているか?

・その所得について帳簿の作成があるか?

 雑所得か事業所得かというのは、なにかで一律に決まるわけではなく、相対的なものです。

 たとえば、給与収入650万円の会社員の方が、動画編集作業で年間150万円の所得を得ていた場合、一般には「雑所得」として申告するのが妥当でしょう。

 しかし、給与収入130万円のアルバイトをしている人が、同じ動画編集作業で年間150万円の所得を得ていた場合、「事業所得」として申告することはそれほど違和感はありません。 

 また、同じように、業務委託で予備校講師をしている人が報酬として年間800万円の収入を得ていて、そのほかに給与収入100万円を得ている場合、その800万円の仕事は「事業所得」に区分するのが妥当でしょう。

 一方、給与収入4,500万円の会社役員の人がセミナーの講演料として年間800万円の収入を得ている場合には、それは一般に「雑所得」として区分することが妥当であると言えます。

 このように、雑所得か事業所得かというのは、その人の仕事内容や社会的地位などによってもその判断に影響が左右されるようなものです。

 深く考えすぎると先へ進まなくなる可能性もありますから、ご自身が「これは副業でほかに本業がある」という認識でいるのであれば、やはりそれは「雑所得」として申告するのが安全でしょう。

「損益通算」は税務調査リスクが高い

 近年、副業をしている会社員はかなり多くなってきました。

 私は元国税調査官ですが、税務署勤務時代には、

 「雑所得」としかいえないような業務の赤字をあえて「事業所得」として申告して、給与所得との相殺をして還付金を受け取ろうとする申告書

 をそれなりに見かけてきました。

 税務署は近年、このようなタイプの申告に対する税務調査に力を入れてきています。

 ちょこっとの赤字で少し還付金を得たことをいいことに、翌年、翌々年と次第に赤字を大きくしているパターンもあります。

 そもそも「赤字」が継続するというのは、それはもう事業として成立していないとも考えられるわけですから、「毎年赤字で損益通算」は非常に税務調査リスクが高いです。

 税務調査では事業実態を確認されることでしょう。どれくらいの規模でどれくらい労力をかけてやっているのか等、そういった点がポイントになってくるでしょう。

 また、これは言語道断ですが、「そもそもなにも仕事をしていなかった」というケース(架空の事業)では、還付金の返還だけでなく重加算税の対象となって重い罰金を支払うことにもなりうるでしょう。

最後に

 副業を事業として確定申告していいのかどうかという点について、解説してみました。

 雑所得と事業所得の税務上の違いとその性質の違いを踏まえたうえで検討していただければと思います。

 生計を立てるためのメインの仕事かどうか?という観点が最もわかりやすいものかなと考えます。

 他人から見て「副業では?」と思われるような状況のなかで、無理に事業として申告をすると、税務調査リスクも高まりますので、その点も考慮して検討するとよいでしょう。

この記事を書いた人

 愛知県一宮市の個人専門税理士です。個人事業主の税務顧問、個人のスポット税務調査対応、住宅ローン控除や不動産の売却に関する確定申告、贈与税・相続税の申告など個人に税金に特化しています。

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