こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。
個人事業主として確定申告を行っていて、これまで一度も税務署から連絡がなかったことから「申告は問題なかったんだな」と考える人もおられることでしょう。
今回は、税務署から連絡がないからといって「確定申告書がOKと認定されている」わけではない、というお話をしようと思います。
税務署の基本スタンスは申告書を「受け付けている」だけ
所得税の確定申告は「自分で税額を計算して自分で税金を支払う」ものです。
反対に言えば、個人の税額を国が一方的に確定させて「支払いなさい」と言うものではない、ということです。
したがって、確定申告の意味とは、
「私は1年間にこれくらいの稼ぎがあったのでこの所得税の金額を支払うことになります」
ということを、国(税務署)に「お知らせをしている」だけです。
税務署は、大前提としては、「申告者である本人の申告内容が正しい」というふうに認識することとなります。
「便りの無いのは良い便り」?
税務署は申告を受け付けているだけですから、税務署からなにも連絡がないということは、むしろそれは当然のことです。
もちろん、住宅ローン控除や贈与税の非課税などの特例を適用するための必要書類に不足があれば、提出依頼の連絡がくるケースもあります。
しかし、一般に個人事業主の確定申告では、帳簿も通帳もレシートも請求書もすべて本人の自宅に保管しているわけですから、その申告内容について税務署が机上で精査することはほぼ不可能です。
「便りの無いのは良い便り」(=便りがないということは、日々が平穏に過ぎている証拠だ)ということばがありますが、これは確定申告においてはあまり当てはまらないでしょう。
どれくらい前だったか忘れてしまいましたが、とあるユーチューバーが動画内で
「確定申告が嫌なのは、頑張って作成して提出したのに、正解だったのか不正解だったのかわからないこと。なにかリアクションしてくれよ」
と話していました。
小学生の頃から「宿題を終えたらすぐに答え合わせをしてどこが違っていたか確認しましょう」と指導されてきましたよね。
ところが、確定申告ではその「答え」がちっとも自分の手元にやってこないわけです。
「答え合わせ」は税務調査のとき
唯一の答え合わせの機会は「税務調査」です。
税務署は、毎年の確定申告書はほぼ受け付けているだけですが、時々、複数の過去の申告書を振り返ってみて、必要に応じて精査をしようと考えます。
これが税務調査です。
語弊をおそれずに言えば、個人事業主から確定申告書が提出されたその時は、申告書の内容はほぼ見ていないに等しいでしょう。
そして、毎年の申告書が蓄積されて3年~5年ほど経過した頃にざっと全体を振り返ってみて、気になる点などがあるときは税務調査を実施することになります。
いわば、小学1年生から小学6年生までずっと宿題をやり続けて、小学校卒業する頃くらいにいきなり全部の宿題の答え合わせをする、みたいなものですね。
やっかいなのは「必要に応じて」というところ
この税務調査は、5年に1回などの定期監査ではなく、税務署が「必要に応じて」実施しています。
いいかえれば、かなり雑でいい加減な申告書を10年間続けて税務署に提出していても、税務署が「必要だ」と思わなければ税務調査は実施されません。
その人はある意味「答え合わせ」をずっとせずにいることになります。
ですから、「個人事業を始めて20年経つけど一回も税務署から連絡ないから自分の申告書は完璧だったんだな」と考えるのはやっぱり違います。
そして、この「必要に応じて」というのは、決して「誤りがあるから」という意味ではなく、たいていは「調査に時間を使ってもいいくらいに気にはなるなあ~」というくらいの意味です。
税務調査が実施されて、指摘事項を受けたときに「誤りがあるならもっと早く言ってよ」と思わず調査官に言ってしまいそうですが、
調査官は「調査に来て初めて誤りが判明したので今、指摘しましたよ」というスタンスでいることでしょう。
まとめ
確定申告書を提出する都度、税務署が内容を確認してOKにしたりNGにしたりしているわけではありません。
「いままで一度も指摘されなかったのでいいってことですよね」
とすぐに考えるのはよろしくないでしょう。
自動車の運転でいつも法定速度を上回っていても、その都度警察が止めにくるわけではないのと似ています。
常に安全運転を心がけるのと同じように、確定申告もできるかぎりの正しい内容としていくように努めましょう。
