こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。
私は、現在は税理士ですが、12年間ほど税務署の職員をしていました。国税専門官採用試験という公務員試験を受験して採用されました。
今回は、国税専門官採用試験で採用されると、財務省や国税庁などの東京(霞が関)で勤務する可能性がある、というお話をしたいと思います。
国税専門官とは
国税専門官とは、国税職員(税務職員)として勤務するための公務員試験の採用区分をいいます。
採用区分上、大卒程度試験が「国税専門官採用試験」で、高卒程度試験が「税務職員採用試験」という名称になっています。
国税組織は、国税庁を頂点として、その下に各国税局があり、さらにその下に各税務署がある、という構造になっています。
特段、国税専門官だから税務署じゃなくて国税局で働く、とかそういうことはなく、国税専門官採用試験で採用された人も全員まずは各税務署で勤務することとなります。
ちなみに、「大卒程度試験」であって、実際に大卒かどうかは関係なく年齢で基準が設けられているだけですので、年齢を満たして大卒資格がなくても試験さえパスすれば採用されます。
国税局に採用されて税務署に配属
国税専門官採用試験の採用活動の主体は各国税局です。私の場合は、名古屋国税局でした。
名古屋国税局は愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の4県を管轄しています。
国税局と税務署はいわば本社と支社のような関係にあり、国税局に採用されて、管轄内のいずれかの税務署に配属される、ということとなります。
まずは全員税務署に配属されますが、採用後4年以降に、評価や本人の希望により国税局(いわば本社)に異動になったりならなかったりします。
国税局に10年以上居続ける人もいれば、2年くらいで税務署にもどってくる人もいます。
国家公務員なので、全国転勤かと思いがちですが、国税局の管轄内での転勤が原則なわけですね。
実は東京に転勤もわりとある
大卒程度の国税専門官採用試験と高卒程度の税務職員採用試験の採用されてからの差は、想像以上に少ないです。
採用直後の給与水準は、若干、国税専門官として採用された職員のほうが高くなっているはずですが、30歳になる頃には高卒だとか大卒だとかはそうそう関係がなくなります。
しかし、私が思うに、この採用区分で最も異なるのは、国税専門官は財務省や国税庁への人事異動を受ける可能性がある、ということです。
国税専門官として採用されると「事務官」という名称を与えられて、配属先の税務署で勤務します。
その後3年経過した頃に「専科研修」という半年間ほどの研修を受講することで「国税調査官」となります。
近年は、研修時期などが改訂されることが多く、現行は私の経験とは若干異なることもありますが、この「国税調査官」になった直後の時期に、初めての人事異動を経験することになります。
たいていは、別の税務署に転勤になったり、希望をして国税局に転勤になったりするのですが、ここ数年、いきなり「財務省」や「国税庁」に転勤(出向)するケースが散見されます。
実は、私も初めての人事異動を経験した1年後の人事異動で「財務省」に出向しました。
この早い段階での財務省や国税庁への出向というのは、私が知る限り、大卒程度枠で採用された職員ばかりです。
財務省で働く、と聞くと「なんかすごい優秀な人なんだな」と思われるかもしれません。
しかしながら、みなさんが想像するよりもずっと多くの職員が出向の辞令を受けており、特段「あいつはエリートコースだ」という認識をもたれることはありません。
専科研修の成績が影響していることは否定できませんが、イメージとしては平均以上の成績であれば、「東京に連れていけそうな奴は連れていく」といった感覚で出向の命を受けることとなります。
霞が関に行きたい人はあんまりいない
霞が関で働くのはちょっとかっこいい、とか思ってしまいがちですが、霞が関は不夜城と言われるように労働環境はやはり過酷です。
私は、税務署の人事面談の際に「財務省や国税庁への出向辞令があったらどうしますか」と聞かれ、「いやです」とは言えない性格でしたので「辞令なら行きます」と回答しました。
そしたら本当に出向の辞令を受けて、かなり驚きました。
ちょうど妻の妊娠が判明したときだったので、東京で子育てをするのかと思うと余計に心配になりました。
税務署内では財務省や国税庁に出向の辞令を受けることは、「あめでとう」と言われる出来事ではなく「た、たいへんだね、健康に気をつけて…」といった心配と励ましの言葉をかけられるようなものでした。
私は、そもそも都会暮らしが苦手だったことや、子供の誕生やコロナウイルス発生などいろいろとタイミングが悪く、たったの1年で愛知県の税務署に戻ってきてしまいました。
ただ、通常は短くても3年間ほどは地元に戻らず霞が関に勤務します。
一応、霞が関勤務を経験すれば、経歴に箔が付き国税局に戻ってきてからはよさそうなポジションを採ることができるようです。
しかし、よほど東京暮らしがしたい人や出世欲の強い人でない限り、「東京へはあんまりいきたくない」と思っている職員が多いように思います。
採用前に知っておきたい
採用後4年後以降に東京への転勤が有りうるということを、私は就職活動時には知りませんでした。
もしかしたら説明があったのかもしれませんが、名古屋国税局は4県内の異動になるとの認識でいたため、まさか東京暮らしが待ち構えているとは思いもよりませんでした。
配属されている税務署にもよるかもしれませんが、副署長などが専科研修を終えた若い職員に対して「次は東京へ行くかもしれないけど無理な理由はあるか?」と一様に面談を持ちかけていることがあります。
私の同僚には「絶対嫌です」と言い切っていた人がいますが、彼はさすがに選ばれませんでしたね。
ただ、年齢的にもだいたいみんな26歳頃ですから、子育てや介護を理由に断る方法もあまりなく「ダメという理由がない」状況になりがちです。
おそらく大多数の職員が、雰囲気に呑まれて東京行きが決まっていることでしょう。
霞が関の職員はかなりの割合が出向者
霞が関、ましてや財務省や国税庁というと「みんな東大出身なんでしょ」と言われることがありますが、実際は全然そんなことありません。
財務省など中央省庁に勤務する職員のうち、いわゆるキャリア官僚はごくごくわずかしかおらず、もともと中央省庁で採用された一般職職員のほか、地方からの出向者が大多数を占めます。
私が財務省で配属された部署(室)にはたしか7人いましたが、全員がもともと出向者でした。
直属の上司もそのまた上司も「もともとはどこかの税務職員」であって、財務省に出向してから地元にはもどらずそのまま財務省に在籍し続けている、というような具合でした。
しかし、30歳前後の若手出向者は「2年か3年でできれば地元に戻りたい」と考えているのが当然な風潮があり、「このまま財務省で出世していくぜ」みたいな人はあまり聞いたことがありませんでした。
1年で帰ってしまった私がいうのもナンですが、「財務省や国税庁の職員の大多数は、もはや派遣職員みたいなものなのではないか?」とすら感じました。
一般人には到底さばき切れないような大量のメールを処理しているなかに、「今日の正午まで」の作業依頼メールが今日来ている、という事態が日常茶飯事で、まさに巨大組織の歯車感がありました。
財務省や国税庁に出向した経験のある多くの人は「税務職員のほうが自由に仕事ができたなあ」と感じるのではなかろうかと思います。
ただ、同僚のなかには「本省では仕事の結果が税務調査の追徴税額のように見えないから、逆にこっちの事務っぽい仕事のほうがいい」と言っている人もいましたので、なんともいえないものではあります。
最後に
マイナス面を多く書いてしまいましたが、この記事で伝えたかったことは、国税専門官として採用されると、結構な割合で財務省や国税庁への人事異動の辞令を受ける可能性がある、ということです。
地方出身だけど大都会の霞が関で仕事をしたいと考えている人は、地方の国税専門官→財務省・国税庁ルートは意外と現実的なものですので検討してみるといいかもしれません。
