こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。
今回は、個人事業主の税務調査が実施される場合には、ほとんどのケースで調査官が自宅に来ます、というお話です。
実地調査が大原則
個人事業主に対する税務調査は、申告した人の住所地に調査官が訪問して行われるのが通常です。
飲食店や美容院などの場合には店舗で実施されることが多いですが、それ以外では基本は自宅です。
また、「税務署に来てください」というパターンもゼロではありませんが、その場合は株式売却の利益や満期保険金の申告漏れなど特定の事項だけを指摘するケースだと想定されます。
なぜ自宅に来るのか?
個人事業主の方のなかには「自宅に来るのはちょっと…」と感じる人もいることでしょう。
ですが、断ろうとしても、調査官は基本的には「ご自宅に伺いますので」との姿勢を崩すことはあまりありません。
なぜ、調査官が自宅に来たがるのかということですが、いちばんの理由は「申告内容を確認するための資料や状況などが自宅にあるから」です。
申告者本人に「申告のもとになった資料をもって税務署に来て」といっても、本人が持参した資料と調査官が望んでいる資料が一致しないことが往々にしてあります。
また、話のなかで確認すべき資料が新たに生ずることも一般的な流れです。
そしてなにより、自宅には作業用デスクや事業用車両、物置き小屋など、申告者本人が普段使っているものがたくさんあります。
これらのものは、本人の仕事内容を理解するうえでも重要で、イメージするのに役立ちます。
また、資料にある原材料などの実物を見て、それと資料を突き合わせて整合性を確認することもできます。
ひょっとすると、申告した本人が調査官に見せる必要がないと思っていた資料に申告内容と整合性がとれないような事実が見つかる、ということも考えられます。
税務調査というと、調査官が帳簿や請求書をペラペラめくって確認しているイメージがありますが、
実際には「むこうの倉庫を見せてほしい」とか「この引き出しを開けていいですか」とか「事業用の車の中を確認したい」とか、わりと手足を動かして調査することが多いです。
自宅だからこその調査の流れ
調査官が自宅へきて調査するからこそ話が進展する場合があります。
たとえば、
建築業を営む個人事業主の税務調査で、「売上の決済方法はすべて振込です」との本人の申し立てどおり、帳簿の売上金の決済はすべて振込となっていたが、調査官が仕事用車両の中を確認したら、現金売上分の領収書が出てきて、現金売上を申告していないことがわかった、
というようなケースです。
また、
外注先となっている取引先の名義の通帳が、申告者本人の自宅の引き出しに入っていたことが判明して、実は架空の外注費を申告していた、
というケースもその典型例ですね。
そのほか、申告書には「妻は専従者」となっているものの、実際に自宅で調査をしたら奥さんが「私は夫の事業に関わっていないです」と説明してきて、専従者としての要件を満たしていなかった、というケースなども考えられます。
結果的に、税務署で面接するのと同じ内容の調査になることも全然あるのですが、「ひとまず自宅で進めること」が調査官としては重要なことなのでしょう。
自宅に乗り込んでくることはない
とはいえ、税務署が実施する税務調査は、テレビなどで観るような強制捜査ではなく、あくまで本人の協力を得て行う任意調査です。
したがって、自宅への訪問を拒否しているにもかかわらず、勝手に自宅に乗り込んでくることはありません。
もし、自宅への訪問を避けたいのであれば、まずはその理由を担当調査官にきちんと説明したほうがよいでしょう。
たとえば、「親が病床に伏していて家に上げるのはどうしても難しい」や、「大規模なリフォームをしていて人を上げられる状態にない」など、やむを得ないケースでは融通を聞かせてくれる可能性もあります。
「部屋が汚いからちょっと…」といったような理由ですと、調査官に「自宅には税務署に知られたくない都合の悪い事実が隠されているのでは?」という邪推をされがちです。
特に重大な問題がなければ、ありのまま自宅を見せてしまうほうが最終的に税務調査はスムーズかつ短期に終えることができるでしょう。
嫌な気持ちになることはきっとほぼ避けられない
税務調査では、調査官が自宅にきて根掘り葉掘り質問されます。
部屋も見られ、通帳も見られ、パソコンのなかも見られます。調査官は、ふつうの客人なら到底しないだろう言動をすることでしょう。
私も税務署勤務時代、調査の相手方から
「こんなふうに自宅にきてあれこれかき回されて、こんなことされたらあなたも嫌でしょう! あなたはなんとも感じないんですか?」
と言われたことがあります。
私は、その方の言っていることが痛いほどわかってしまったのできっと調査官には向いていなかったのでしょう。
ただ、税務調査という性質上、調査官は申告者を100%信用するわけにはいかず、申告者本人の申し立てだけでOKとすることができないものです。
したがって、資料や状況証拠から確認するほかなく、それなりに詮索せざるを得ないものです。
ですから、可能なかぎりお互いに気持ちよく税務調査を進められればそれに越したことはありませんが、どうがんばっても申告者である本人は「嫌な感じ」を受けずにはいられないでしょう。
そういった意味で、税務調査を受けるということは、本人にとっては少なからず心理的な負担があることでしょう。
まとめ
個人事業主の税務調査では調査官が個人事業主である本人の自宅を訪問しにきます。
それは自宅で調査をすることでその都度必要な事項を確認することができるからだと考えられます。
個人事業主本人が調査官を自宅へ招き入れることは、よほどの事業がない限り、税務調査をスムーズにかつ短期に終了させるためにも必要な基本的対応となります。
少なからず心理的な負担を感じるものではありますが、できるかぎり協力してなるべく早期に調査を終えるように進めていくことが、結果的に本人にとって有利な状況を生み出すことにつながることでしょう。
