消費税の3割特例と70%控除が同じものだと思っていませんか?

 こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。

 消費税のインボイス制度に関して、令和8年10月1日から「インボイス発行事業者以外の者」からの課税仕入れ(経費)については、その取引金額の70%相当を控除の対象とする、という改正が行われました。

 一方、年商1,000万以下の小規模事業者について「3割特例」の改正も令和9年分から始まる予定です。

 これらは、ちょうど7:3みたいな感じになっているので、一緒のものだと思ってしまうかもしれません。

 今回は、この2つにスポットを充てて簡単に説明してみたいと思います。

目次

「3割特例」は令和9年分から

 まず、「3割特例」は、「2割特例」から変更されるもので、この変更(改正)は、令和9年分の確定申告からとなっています。

 次の令和8年分の確定申告ではまだ「2割特例」は生きておりますので、「3割特例」はもうちょっとだけ先のお話になりますね。

 そして、そもそも「2割特例」というのは、インボイス制度の導入に伴って経過措置として創設されたものです。

 インボイス制度導入前は、消費税の申告が必要になるのは、原則として「2年前の年商が1,000万円を超える事業者」に限られていたわけですが、インボイス登録をした場合には「年商に関わらず」申告が必要になりました。

 1,000万円を基準にしていたのは、「1,000万円を超えない事業者にとって消費税の計算をするのは事務負担が大きいだろう」という考え方があったからです。

 そこで、インボイス制度導入にあたり、

「年商1,000万円以下である事業者がインボイス登録をしたこときっかけに消費税の申告をしなければならなくなったのは大変だ」ということで、

「簡単に計算できて、しかも納税額がおおむね少なめになるような方法」

 として「2割特例」という計算方法が創設されました。

 「2割特例」というのは、消費税の納税額を「売上高」(課税売上高)に含まれる消費税額の20%分とする、という計算方法です。

 売上高 880万円 (税込)

 であれば、

 880万円×10/110=80万円

 80万円×20%=16万円(納税額)

 ということになります。

 「3割特例」で計算してみると、

 80万円×30%=24万円(納税額)

 となります。

 つまるところ、ここでの理解で大切なことは、「2割特例」や「3割特例」は、

・原則として「2年前の年商が1,000万円を超えない事業者」に限り適用することができるもので、

・「売上高(課税売上高)」だけを使って計算する簡便な計算方法

 を言うということです。

「70%控除」とは?

 「70%控除」は、インボイス制度導入に伴い創設された「80%控除」が改正されたもので、この「70%控除」は令和8年10月1日にスタートしています。

 まず、最も重要なポイントは、この「70%控除」は先ほどの「2割特例」や「3割特例」を適用する事業者にとっては、消費税の計算上「まったく影響がない(関係がない)」ということです。

 この「70%控除」は、取引先がインボイスの登録をしていない者である場合には、いわば消費税の計算をするときに使用する経費の金額を実際の経費の金額の70%しか使えないものとする、というものです。

 これまで「2割特例」のみ適用してきた事業者の方にとっては、もしかしたらしっくりこないかもしれませんが、

 本来、消費税額は「2割特例」のように「売上高」だけで納税額が決まるものではなく、「売上高」と「経費(=課税仕入れの金額)」の両方の金額を基礎として計算するものなんですね。

 この売上高と経費の両方を基礎として計算する「本来の計算方法」を「一般課税」や「本則計算」と言います。

 「3割特例」は、このような「一般課税」の方法を採用している事業者(=原則として2年前の年商が1,000万円を超えている事業者)について、

 経費に関する取引先にインボイス登録のしていない者があるときに初めて消費税の計算に影響してくるものです。

 仮に、

 売上高 2,200万円(税込)

 外注費 880万円(税込)

 その他の経費 550万円(税込)

 であった場合に、すべての経費の取引先がインボイス登録をしている事業者であったとすると、

 ①2,200万円×10/110=200万円

 ②880万円×10/110=80万円

 ③550万円×10/110=50万円

 ④ ①-(②+③)=70万円(納税額)

 となります。

 一方、もし、外注先の全員がインボイス登録をしていない者であったとすると、

 ①2,200万円×10/110=200万円

 ②880万円×10/110=80万円

    80万円×70%=56万円

 ③550万円×10/110=50万円

 ④ ①-(②+③)=94万円(納税額)

 となります。

 納税額の差額は94万円-70万円=24万円にもなりますね。

 これまでは80%控除でしたので、取引金額によっては納税額へのインパクトは小さかったかもしれませんが、70%控除となると影響をもっと直接的に感じることになりそうですね。

「2(3)割特例」と「簡易課税」を適用する方へ

 「70%控除」は、実際の経費(=課税仕入れ)についても消費税額の計算に用いる原則的な方法(=一般課税)を採用する場合に限り、検討すべきものです。

「2(3)割特例」(又は簡易課税)を採用する事業主の方は、「売上高」だけを基礎として納税額を計算することになりますから、この「70%控除」は消費税の納税額に影響がありません。

 したがって、計算に関しては気にする必要がない、ということになります。

まとめ

 「3割特例」は「2年前の年商が1,000万円以下であるインボイス登録をした事業者」についての特例計算です。

 そして、開始時期は令和9年分の確定申告からで、次の令和8年分の確定申告ではまだ「2割特例」の状態です。

 一方、「70%控除」とは、本来の消費税額の計算方法である「一般課税」(本則計算)を行う事業者に関わるもので、インボイス登録をしていない取引先に支払う経費(=課税仕入れ)についてはその70%相当分しか消費税の計算に考慮されない、というものです。

 そして、「70%控除」は令和8年10月1日から既にスタートしています。

 「3割特例」と「70%控除」は、似たような名称ですがその中身はまったく異なるものです。

 その意味と開始時期を混同しないようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

 愛知県一宮市の個人専門税理士です。個人事業主の税務顧問、個人のスポット税務調査対応、住宅ローン控除や不動産の売却に関する確定申告、贈与税・相続税の申告など個人に税金に特化しています。

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