こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。
個人事業主の方のなかには、税務調査があった同業者の話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
今回は、元国税調査官である私が、一般的な税務調査がどのように始まるのか簡単に書いてみたいと思います。
※この記事は、国税局ではなく税務署が調査を行うケースを想定しています。
ほとんどは電話で事前に日程調整あり
税務署が税務調査を行おうとする場合、通常は担当調査官が確定申告をした本人に対して電話で連絡をします。
電話の用件は、
①税務調査を実施すること
と
②調査日の日程調整依頼
です。
つまり、通常は「アポなしでいきなり税務署がウチに来た!」ということにはなりません。
これは、国税通則法という法律で「税務調査を行う場合には事前に本人に連絡するように」と規定されているからです。
税務署から電話ということで、びっくりする人もいることでしょう。
また、電話が仕事の合間だったりして、職員が話している内容をうまく理解できなかったりすることもあると思います。
この調査の連絡と日程調整という電話は、法律で規定されていることから、税務職員が話す内容はおおむね固定化されています。
したがって、状況がうまく飲み込めなくても、職員が電話で次のようなワードを言っている場合、「税務調査が実施される」と理解して間違いないでしょう。
・「調査をするので自宅へ伺いたい」
・「自宅でご本人さんから話を聞きたい」
・「申告の内容の確認ということで」
・「令和〇年、△年、□年分の所得税~」
・「事前通知(じぜんつうち)として~」
・「当日は帳簿や通帳などの資料を用意~」
・「担当者はわたくし○○です」
・「〇月〇日の〇曜日か△日の△曜日か、もしくは□日□曜日のどこかで、一日ご都合が取れるところはありませんか」
一般には「税務調査」と言われますが、税務職員は「税務調査」ではなく、法律用語である「調査」と言うことが多いです。
税務署の職員が「調査」と言うわけで、「税務調査」なのは当然といえば当然なのですが、電話を受けた方のなかには、
「これっていわゆる税務調査ですか?」
と聞き返す方もいましたから、「これは何の電話だ?」と疑問に感じる人がいることも不思議ではないことなのでしょう。
電話では、調査の対象となる税目とその年分を言われます。通常、直近3年分と所得税(と該当あれば消費税)です。
ちなみに、税目はきちんとした正式名称で言われますから、
・所得税⇒所得税及び復興特別所得税(しょとくぜい および ふっこうとくべつしょとくぜい)
・消費税⇒消費税及び地方消費税(しょうひぜい および ちほうしょうひぜい)
という文言になります。
これを職員から電話で口頭で言われるので少々まどろっこしいですね。
年分は、たとえば「令和8年分、令和7年分、令和6年分の3年間です」といった言い方になりますから、特に問題はないでしょう。
税務調査では、調査が実施されるなかで、4年前や5年前などにさらのさかのぼって調査を実施することになる場合があります。
職員からの最初の電話連絡では、その可能性があることをあらかじめ伝えられるはずですから、
対象の直近3年間などを伝えられた最後に、
「いま伝えた年分以外にも調査の対象とする場合があります」
と言われることになりますが、
これは可能性だけの話でいわば決まり文句みたいなものなので、急に不安になる必要はありません。
また、調査では基本的には丸一日、自宅で調査官からの質問などに応じることとなります。
税務署は役所ですから、平日しか対応しません。都合に問題がなければ、おおむね「朝10時~夕方4時頃」のイメージです。調査官は、昼食時は1時間退席するのが通常です。
ただ、個人事業主の方はどうしても「平日の丸一日」が難しい場合があります。そのときは素直に担当調査官に相談してみましょう。
「朝9時30分から12時前まで」とか「午後2時から5時ならOK」とか、半日ほどであれば了解してもらえる可能性もあります。
日程については、担当調査官が3つくらいの候補日を提示することがほとんどです。
特に、その場で即答する必要はありませんので、「確認して折り返します」で全然かまいません。
ただ、実は担当調査官は、「このまま本人と連絡が途切れるのでは?」という心配をいつも念頭に置いていますから、
可能であれば「今週中に折り返す」とか「来週の月曜日までに折り返す」とか期限を付けて回答するほうが誠実な対応として好印象でしょう。
なお、税務調査は少なくとも「申告者本人」が対応する必要があります。
「経理は妻に任せているから」と言って、「妻だけで対応」ということはできません。
「最初の2時間は本人と経理担当の妻、その後本人は仕事へ出かけるので夕方までは妻だけが対応」
というケースであれば、担当調査官から了解を得られる可能性もありますから、どうしても都合がつかない場合には検討してみてもよいかもしれません。
一度決めた調査日を後から変更することもできますが、理由を尋ねられたり、絶対に確約できる日程などの回答を求められたりして、少々わずらわしく感じることになろうかと思います。
ですから、「とりあえずこの日で!」というよりかは「絶対にこの日なら大丈夫」というように、日程については慎重に検討して回答しましょう。
ちなみに、税務署が行う個人に対する税務調査は、担当調査官が一人で行うことが多いです。
自宅にスーツを着た人がぞろぞろ来るわけではありませんのでご安心ください。
しばしば担当者と補助者のような感じで二人組で調査に来ることもありますが、担当者の調査経験が浅くベテラン職員が補佐している等といった場合が多く、「職員二人だから厳しい調査になるのでは?」など心配することはまったくありません。
まれに事前連絡がない場合がある
ほとんどのケースでは税務調査は事前連絡がありますが、まれに「突然、調査官が来た!」というケースがあります。
国税通則法という法律は、「調査は事前に連絡する」を基本としていますが、一部例外規定を設けており、一定の場合に該当するときは「事前の連絡なしでもOK」といったような建付けになっています。
一概には言えませんが、一般に「現金取引を多く行う事業」では、事前連絡がないケースがあります。
飲食店はその典型ですね。
たとえば、個人のラーメン屋でランチ営業が終了した直後に突然、調査官が店舗を訪問してレジや伝票などを調査する、という感じです。
「現金その場限り」といったように、「その時」を確認する必要があると税務署が判断した場合には、事前連絡なしに税務調査が開始することがあります。
もちろん、税務署は「ふらっと立ち寄った」ということではなくて、たいていは数年前から「ここのお店は申告内容がおかしいのでは?」と狙いを定めて準備をしてきています。
事業主からすると突然の訪問なんですが、税務署からすると「ついに来たこの日」のような感じです。
ランチ営業後に突然、調査官が来るわけですから、普通に考えるとスケジュール的に都合が悪いものです。
ただ、「また今度来てほしい」と依頼しても、応じてもらえない可能性が高いです。
調査官からすると「今、確認しないと意味がない」ですからね。
とはいえ、調査官は強引にお店や自宅に入ることはできませんから、「今からは無理な事情を具体的に説明する」か「1時間だけなら何とか大丈夫」など素直に調査官に相談するほかありません。
売上をごまかしているのは言語道断ですが、飲食店など現金取引のある個人事業をしている以上、一生に一回はこのような税務調査の可能性があることをあらかじめ知っておくだけでも違ってくるでしょう。
まとめ
税務調査は基本的には事前に電話で連絡があります。その際、調査担当者からいくつかの事項の説明がありますので、できるかぎりよく聞くようにしましょう。
また、調査日程は即答せず慎重に検討しましょう。
知らないことばを担当者から言われたら素直に質問すれば担当者は質問に回答してくれるものですので、落ち着いて対応しましょう。
まれに、事前の連絡なしに調査官が訪問しにくることがありますが、可能な範囲での対応を心がけて、どうしても都合が悪いときには事情を調査官へ説明してみましょう。
税務調査は、一生に一回経験するかどうかといった出来事です。心配になるのも致し方ありませんが、慌てず落ち着いて対応ができるといいですね。
