こんにちは! 愛知県一宮市の個人専門税理士の服部です。
個人事業主に税務調査が実施される場合に、本人以外の家族の預金口座も調べられてしまうのか気になる人はいると思います。
税務調査当日は本人の通帳だけを用意
税務調査は、原則として事前に電話にて日程調整が行われます。そのときに、調査当日に用意してもらいたいものを担当調査官から告げられます。
とはいえ、「帳簿、通帳、請求書、領収証など確定申告書を作成するための資料一式」というような言い方であって、いわば定型文で指示されます。
通帳は、事業で使用している通帳を用意しておけばOKです。税務調査としては事業上の入出金などを確認することが基本です。
調査当日にほかの口座について尋ねられる
調査当日にA銀行の通帳を用意しておいたら、調査官はたいてい「プライベートも含めてほかにどこか口座のある金融機関はありますか」と尋ねてくるでしょう。
その場合、個人事業主本人が持っている口座の金融機関を回答すればOKです。
既に調査官は個人事業主の保有口座を把握している可能性もありますが、持っている情報と照合するためにもこのように質問をしてくるでしょう。
とりあえず口頭で「B銀行とC銀行があるよ」と回答して、その用途を簡単に説明するとスムーズです。
調査官は、結局、個人事業主が「事業用通帳はこのA銀行です」と言っておきながら実は「B銀行の口座でも事業用の取引をしていた」なんてことがないかを確認したいのです。
プライベートの内容を覗きたいわけではなく、「確かに事業用じゃないこと」を確認するというわけです。
銀行への履歴照会は家族名義分も実施する
調査官が自宅などに訪問してきた調査当日に家族名義分の通帳を提示するよう指示されることは通常ありません。
たとえば、配偶者が個人事業主本人から専従者給与の受け取りをしているといった場合には、配偶者名義のその給与受取り口座の通帳の提示を求められることはあるかもしれません。
また、事前の情報収集や調査当日の請求書のチェックなどを行うなかで、配偶者や子どもの家族名義の通帳を個人事業主本人が事業用として使用しているという疑いがあるときは、その家族名義の通帳の提示を求められるかもしれません。
ただ、そういった状況でないのであれば、調査当日に家族名義の通帳の提示をする必要が生じることはないでしょう。
しかし、税務調査は、調査官が税務署へ戻ってからも継続しています。
税務調査当日の状況にもよりますが、一般に調査官は訪問後に、個人事業主が持っている口座の金融機関に対して、その預金履歴の照会を実施します。
調査当日に調査官がその場で通帳のコピーをとることも多いですが、少なくとも聞き取りをして把握した金融機関には過去3年~5年ほどの預金履歴を金融機関に照会することが一般的でしょう。
その際に、おおむね同一世帯である家族名義の預金口座についても一緒に照会することもあるでしょう。
これは、先ほどと同じように主に「実は家族の名義の通帳で事業の取引をしているなんてことはないか?」を確認するためです。
ですから、「事業とかかわりがない」と判断されれば、特に税務調査で問題になることはありません。
仮に、個人事業主と同居する息子が家族に内緒でギャンブルにハマっている様子がうかがい知れる息子名義の口座履歴が把握されたとしても、調査官が個人事業主に対して「息子さんはギャンブルしているようですね」といった告げ口をするということはまずありえません。
税務署権限で把握した各個人の情報を、家族といえでもバラしてしまうことは守秘義務に反しますので、このような情報の扱いには、調査官は相当慎重です。
しかし一方で、たとえば、個人事業主の娘の口座の履歴を照会したところ、どうも夜の店などで働いていてかなりの報酬を得ているにもかかわらず無申告であるようだ、ということが把握された場合などには、税務署内でその履歴が課税資料として保管される可能性はあります。
個人事業主本人の税務調査とは別に、期間をあけてどこかのタイミングで娘さんに対する税務調査を行うことになる可能性は否定できないでしょう。
まとめ
税務調査当日には、家族分の通帳を見られることは通常ありません。
しかし、個人事業主が持っている口座の金融機関に対しては、税務署がその金融機関に対して家族名義分も含めて後日履歴照会をする可能性は十分にあります。
仮に、そこで家族のほうに相当な規模での無申告などの状況が把握されたとしても、すぐに調査が実施されるわけではなく、いったんは内部的な課税資料として保管されることになるでしょう。
私は元国税調査官ですが、正直なところ、税務署で実施していた個人事業主の税務調査で、家族名義分の預金履歴を照会して「あっと驚くような事実が判明した!」という経験はありません。
もし、税務調査が実施される個人事業主のご家族で、家族に秘密にしている預金の動きについて調査で家族にバレてしまうのではないかと不安になっている人がいるとしたら、私は「さほど心配する必要はないですよ」とお伝えしたいですね。
